​ハヨンガ

著者インタビュー

政治学科で女性学を学んだ後「フェミニストジャーナル イフ」編集長を経て、粛宗王時代のムーダン女性の純粋にして不吉な謀反の夢を素材とした長編小説『大雨』で2017年第13回世界文学賞優秀賞を受賞。

エッセイ『男はチョコレート』『私の可愛い君』などがあり、2020年韓国文化芸術委員会文学創作基金の支援対象に選ばれた。

Q ハヨンガを書くことになったきっかけはなんですか?

A 実際に見た「ソラネット」の招待客募集投稿でした。ソラネットは知っていましたが、ここまで酷いとは思っていませんでした。韓国の全ての女性を「商品」にしてしまう場所、ヘル・コリアの中でも最も残酷なヘルがソラネットです。
ところがしばらくして、そこを閉鎖させた女たちがいたことを知りました。これはオンラインフェミニストたちが納めた貴重な勝利だと思い、その勝利を記録しなければと感じました。

そしてまた、ソラネットは閉鎖されたけれども、依然として盗撮犯罪が堂々と行われている現実を告発しなければという使命感も強くありました。

Q どのような点を重要視して書いたか。

 

A 二点あります。まずは女性を対象とした性暴力を、ただ刺激的で扇情的な素材として消費されないようにしたかった。男性作家の多くの小説で、レイプやセクハラがそのように消費されているのがとても不快だったからです。
スリラーのジャンル的な効果のために、またはプロットの緊迫感のために、女性たちは残酷にレイプされ、殺害されます。女性たちの苦痛と、生き残ったその後の時間についての話は描きません。まさにその話こそが私たち女性には必要なのに。徹底して女性の視点で、オン・オフラインで繰り広げられる性暴力の経験を語りたかったのです。

 

もう一つ、被害者として女性キャラクターを描き出す上で大いに悩みました。
性暴力は性と関係する特殊な暴力であるため、他のものに比べてさらに苦痛の大きな被害経験となりえます。かといって一生性的羞恥心を背負い続けなければならない足かせになってはなりません。
性暴力被害者を苦しめるのは被害経験自体よりも、それ以降に直面する「被害者らしい被害者」という家父長的認識です。それを破る女性たちが登場し始めていることを、女性キャラクターを通して見せたかったのです。

Q 書くうえで最も大変だったのは?

 

A 実在ソラネットユーザーたちが女性に向けて吐き出す嫌悪の言葉には、とてもじゃないが慣れることができませんでした。肉便器、お辞儀喰い、袋喰い、チンコの家、マン電前、三日一、堕胎虫……小説に登場したこれらの言葉はまだマシな部類です。ソラネットユーザーたちの言葉をそのまま小説に移すことはできませんでした。小説は永遠に現実について行くことができない、という言葉を実感しました。どうしてこんな想像ができるのか、どうしてこんなに浅薄で、残忍になれるのか。極度の嫌悪感が押し寄せ、殺意が湧きました。そんな時は数日間、パソコンに向かえなかった。犬と散歩ばかりして、再び書ける気持ちになるまで待たなければなりませんでした。

女性キャラクターたちの苦痛を描き出すのも簡単ではありませんでした。その部分をかきながらずいぶん泣きました。男性キャラクターを殺したい思いがふつふつと込み上げ、そんな時、現実の女性たちはそこまで乱暴ではなかった、ということを一生懸命思い出さなくてはなりませんでした。

Q タイトルを「ハヨンガ」とした理由は?

 

A 「ハーイ、おこづかいデートしない?」呆れてものも言えない問いかけです。全女性の「商品」化を示す象徴的な質問、それ以外の何ものでもありません。女性の体を取引する文化、女性の体を卑しめ、あざけり、踏みにじる文化が「ハヨンガ」という言葉に込められていると思う。その文化を享受する者たちにこちらから問いかけたかった。それでよいのかと。

Q 最後に、読者に伝えたいことは?

A 「このままじゃ韓国が盗撮で滅びるかもしれない」。偶然出会った20代の女性が私にそう言いました。「男が怖くて恋愛できない。彼に盗撮されるかも、殴られるかも、殺されるかも。だから恋愛はあきらめる」と。女性たちは男性たちと別の理由から「N放世代」(訳註・主に就職難からいくつかのこと=”N”umber をあきらめた=”放”棄世代。「3放世代」は恋愛・結婚・出産の3つを諦めた世代のこと)になっています。「生存のためにフェミニストになった」という言葉は虚勢でも単なる宣言でもありません。韓国社会の若い女性たちがなぜ通りにくり出したのか、なぜ今この時期にフェミニズムを必要としているのかを省察しなければ、私たちの共同体は崩壊してしまうかもしれない。脅しではない。それがリアルな現実なのです。

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aboutBOOK

実在した韓国最大のアダルトサイトを爆破し、韓国社会を変えた、リアルフェミニストたちの闘い。

韓国フェミニズムドキュメンタリー小説

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チョン・ミギョン