こんにちは。アジュマブックスの北原みのりです。
あっという間に世界の景色が変わってしまい、眠れない不安な夜を過ごしている人は少なくないと思います。「戦え」という勇ましい声が大きくなるなか、今、私たちにできることは何でしょうか。
今日は、3月の新刊をご案内します。
石原燃さんによる性を巡る3部作「夢を見る」です。
私自身が燃さんの作品に初めて触れたのが、日本人「慰安婦」女性を描いた「夢を見る」でした。貧しさ故に「身体を売り」生きてきた主人公ヘル。戦後、ひょんなことからヘルと出会った若い「わたし」。女という性を生きる二人が、「性」を真ん中において、正面からぶつかるような対話をしていきます。
「身体を売るしかなかったんだ。あんたから見りゃ、もっとうまい生き方があるんだろうけど、できなかったんだよ、あたしには」
戦後GHQによって公娼制度はなくなりましたが、男が「買う」権利は、平和時には当然保存され、そして戦時中はより暴力的な形で発展していきました。「慰安婦」にさせられた女性たちには、多くの日本人もいましたが、声をあげ過去を語った女性は殆どいませんでした。 「夢を見る」に登場するヘルは、日本人「慰安婦」だった過去を語り、南の国で亡くなった朝鮮人女性たちへの思いを語った城田すず子さんを思い出させますが、この国には、戦後、たくさんの「ヘル」がいて、たくさんの「城田すず子さん」がいたのです。
他に、男性の性被害を描いた「蘇る魚たち」。中絶をテーマにした「彼女たちの断片」が収録されています。
アジュマブックスをたちあげる前から、石原燃さんの戯曲をずっと本で読みたいと思っていました。戯曲は文学。戯曲は思想。戯曲は運動。その思いで、今回、文学としての戯曲集「夢を見る」をアジュマブックスで出せたことをとても嬉しく思います。
性を巡る物語。
暴力は性を支配します。暴力によって性は萎縮し、壊れます。
性を巡る物語は暴力の本質を描くことでもあります。
だからこそ、この時代、私はこの一冊を、多くの人に読んでいただきたいと思っています。
全国の書店で、そして3月に公演される舞台「彼女たちの断片」の劇場で、そしてアジュマブックスのオンラインで、お求めください。
皆様のご感想をお待ちしています。
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